【死亡事故・会社の代表者約3300万円の増額。逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事案
- 獲得金額
- 9202万9710円
- 受傷部位
- 外傷性ショック
- 後遺障害等級
ご相談内容
被害者 | 61歳・男性・会社役員 |
---|---|
事故態様 | 信号機により交通整理の行われている交差点を青色表示に従って直進して通過しようとした普通乗用自動車が、左方から赤色表示を無視して同交差点に進入してきた普通乗用自動車に追突され、被害車両の同乗者が死亡。 |
死傷の区別 | 死亡 |
獲得金額 | 9202万9710円(保険会社最終提示額5927万8720円) |
裁判所・事件番号 裁判年月日 |
札幌地方裁判所平成7年(ワ)第5132号 平成9年1月10日判決 |
被害者は,走行中の普通乗用車に同乗していたが,交差点を赤信号無視して進行してきた加害者運転の普通乗用自動車に追突され,死亡するに至りました。
被害者はグループ企業の経営者でした。
サポートの流れ
項目 | サポート前 | サポート後 | 増額幅 |
---|---|---|---|
治療費 | 121,838 | 121,838 | 0 |
死亡逸失利益 | 44,478,720 | 48,185,280 | 3,706,560 |
死亡慰謝料 | 13,500,000 | 24,000,000 | 10,500,000 |
葬儀費 | 1,300,000 | 2,000,000 | 700,000 |
損害の補填 | ▲121,838 | ▲121,838 | |
弁護士費用 | 0 | 7,400,000 | 7,400,000 |
遅延損害金 | 0 | 10,444,430 | 10,444,430 |
合計 | 59,278,720 | 92,029,710 | 32,750,990 |
単位:万円 |
会社役員の報酬の中には実際に稼働する対価としての部分(労務対価部分)と利益配当などの実質を持つ部分(利益配当部分)が含まれることがあります。交通事故において逸失利益の算定の基礎収入から利益配当部分は控除すべきという裁判例が支配的となっています。
本事案においても、裁判官は当初役員報酬全額を基礎収入とするに躊躇しており、中途で提示した和解金額6,653万0848円も、役員報酬の7割を基礎として計算したものでした。
そこで裁判官に、死亡した被害者が決して過大な収入を得ていたわけでないことを十分に認識してもらい、実際の報酬額から一定額を引くと不当な結果となるということを主張しました。また中小企業の社長の仕事内容や報酬などについての世間の常識を理解してもらうために、『中小企業社長の収入と資産』という冊子を証拠として提出しました。
なお、支配的である裁判例の考え方について、そもそも理屈上の限界があります(解説)。
解決内容
裁判所は、当方の主張を受け入れ、被害者の得ていた収入はすべて労務の対価であると評価しました。
これにより当初保険会社が提示していた示談金が6,000万円弱であったのに対し、最終的には9,200万円余りの支払いとなりました。
担当弁護士の所感
本件は,判例誌『判例タイムズ』(990号228頁)で,「会社の代表者の死亡による逸失利益について現実の報酬を基礎として算定された事例」として紹介されました。
この判例誌のコメントでは、「本判決は、二つの会社の代表取締役を兼任する者の逸失利益について、現実の報酬額を基礎として算定した事例であり、今後の同種事案の処理上参考になろう。」と解説されています。
その後10年以上経って、当事務所は同種の代表取締役の逸失利益に関する事案を担当し、その札幌地裁平成21年2月26日判決でも、るが、同判決登載誌(『判例時報』(2045号130頁))のコメントで、「本判決は、小規模な有限会社の57歳の代表取締役につき、役員報酬年額840万円の全額を労務対価と認め、70歳までを稼働可能年令と認めて逸失利益を算定したものであり、実務上の一般的傾向より多くの逸失利益を認めた点に特色があるので、実務上の参考として紹介する。」と解説されています。
要するに、「実務上の一般的傾向より多くの逸失利益を認めた点に特色」とされ、10年以上経っても、実務上の取扱いとされてはおらず、じっくり考えると当たり前のことであっても、裁判官の常識になっているとは限らないという現実を踏まえ、訴訟の審理過程において、きちんと事案に応じて個別具体的に主張立証しなければ、正論が見過ごされ、採用してもらえないことになりかねないという実情に応じた対応が必要となります。
その他の解決事例
【後遺障害14級】訴えを提起することにより,裁判所基準と保険会社基準の差が明らかに現れ,過失相殺されても40万円余り増額した賠償額を獲得した事例
- 獲得金額
- 242万0933円
- 受傷部位
頚椎捻挫,腰椎捻挫,右足捻挫,右手捻挫及び右足神経炎
- 後遺障害等級
併合14級 頚椎捻挫後の項頚部緊張痛の症状(14級9号[局部に神経症状を残すもの]),腰椎捻挫の腰部緊張痛の症状(14級9号[局部に神経症状を残すもの])
【後遺障害1級】近くの横断歩道を渡らなかった自転車だが重大な過失ではないとし,将来の介護料が認められた事例・自動車共済の54万円の最終提示に対し、裁判所で2300万円余りを獲得
- 獲得金額
- 2314万円8910円
- 受傷部位
頚髄損傷、左腓骨骨折、頚椎骨折(四肢機能全廃)
- 後遺障害等級
1級3号[神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの]頚髄損傷、左腓骨骨折、頚椎骨折(四肢機能全廃)
【後遺障害等級14等級】卸問屋の管理職であったが,事故後に,降格され,退職した男性が,裁判を起こし、保険会社の最終示談額より約400万円増額できた事例
- 獲得金額
- 569万5682円
- 受傷部位
頚椎捻挫及び腰椎捻挫,頚部及び背部に軽度筋痛,右肩から上腕にかけて強い違和感,右上肢のしびれ感,右肘部の痛み,椎間板ヘルニア,座骨神経痛
- 後遺障害等級
14級10号[局部に神経症状を残すもの]椎間板ヘルニアによる局部の神経症状