女性・症状固定時27歳・看護師
                【後遺障害9級】外貌醜状の後遺障害が残存した事故。保険会社の最終提示損害残額は780万円余りであったが,裁判所の和解で1400万円を獲得した事例(610万円余りの増額)
- 獲得金額
- 1400万円
- 受傷部位
- 割れたガラスによる多数の顔面擦過傷及び左頚部切創
- 後遺障害等級
事案・ご相談内容
| 被害者 | 女性・症状固定時27歳・看護師 | 
|---|---|
| 事故態様 | 被害者が同乗していた加害者運転の車両が、左方縁石に乗り上げ樹木に衝突し、割れたガラスで傷害を負い、後遺障害が残存 | 
| 部位,受傷内容 | 割れたガラスによる多数の顔面擦過傷及び左頚部切創 | 
| 後遺障害等級 | 9級16号 [外貌に相当程度の醜状を残すもの] 残存する左頰及び左頸部の複数の線状痕、突っ張りの症状の後遺障害 | 
| 獲得金額 | 1400万円(保険会社最終提示額768万4512円) | 
| 裁判所・事件番号 和解年月日 | 札幌地裁令和4年(ワ)第250号 令和4年12月13日 | 
争われた内容(争点):外貌醜状(それだけでは通常は労働能力に影響を与えないと考えられる後遺障害の類型のひとつ)
-  後遺障害に関する損害(逸失利益、後遺障害慰謝料等)については、裁判所は、自賠責保険で該当すると認定された後遺障害等級に見合った労働能力喪失率と慰藉料の額で一応の立証ができたと考え、そのような等級を認定することが多いのですが、後遺障害等級には、それだけでは通常は労働能力に影響を与えないと考えられる後遺障害も定められています(問題となる後遺障害としては、例えば、醜状痕、歯牙障害、腸骨採取に伴う骨盤骨変形、脾臓障害、脊柱変形、臭覚障害等)。
 「外貌醜状」と呼ばれる後遺障害、顔面部、頚部等の日常露出する部位に、瘢痕、欠損、組織陥没、線状痕などを残す後遺障害は、その典型です。
- 自賠責制度においては、労災制度に準じて運用され、男女を問わず、「著しい醜状を残すもの」が7級(労働能力喪失率56%)、相当程度の醜状を残すものが9級(35%)、単なる醜状を残すものが12級(14%)とされています。
 しかし、ファッションモデル、俳優など外貌を含めた容姿が仕事の有無・内容に直結するような職業、営業職など人と接触の多い職業などは不利益が生じ得るとしても、それ以外の職業では影響がないのではないか、そういった現実の問題があります。最低限の保障という自賠責制度の目的に限らず、被害者の十分な救済を衡平の理念に照らし適切に図るため、逸失利益の算定の基となる労働能力の喪失を考える場合、外貌醜状は、身体的機能・能力を減少・喪失させるものではないことから、実務上、労働能力喪失の有無と程度について激しく争われるのが通例です。
攻撃防御のポイント
-  外貌醜状の取扱いなどについて、裁判官らによる文献では、「裁判実務においては、個別の事情によるので、男女を問わず、被害者の職業等を考慮して、逸失利益を判断することになる」とか、「後遺障害等級表の等級及び労働能力喪失率表の喪失率にとらわれることなく、個別具体的に醜状障害の内容及び程度、被害者の職業等が検討され、労働能力喪失の有無及び程度が判断されている。」などとまとめられています。
-  しかし、このようにしかまとめようがないとしても、この一般論から、依頼者のための何か特効薬が生まれてくるわけではありません。
 交通損害賠償訴訟は、大量の同種事案を公平・迅速に処理するため、統一的損害額が算定されざるを得ないとされています。
 しかしそうであっても、被害者本人にとって、また依頼された弁護士にとっては、個別案件そのものであって、交通損害賠償訴訟であっても、一般的取扱いに甘んずることなく、独自の立場で一定の特殊な対応が必要となりますが、特にそれだけでは通常は労働能力に影響を与えないと考えられる後遺障害の類型の場合、被害者に有利に展開させ、被害者として妥当な解決を獲得するためには、個別具体的な事情の中から、独自の視点で、何を拾い上げ、どのように提示するべきであるかを検討して、空中戦、心理戦も含めた総力戦の中に有効に持ち出していかなければなりません。
獲得金額の費目ごと金額(保険会社提示額との対比)
傷害慰謝料996,8001,500,000503,200弁護士費用01,602,4611,602,461
| 項目 | サポート前 | サポート後 | 増額幅 | 
|---|---|---|---|
| 治療費 | 2,169,201 | 1,797,846 | ▲371,355 | 
| 通院交通費 | 18,240 | 16,800 | ▲1,440 | 
| 諸雑費ほか | 4,350 | 4,500 | 150 | 
| 休業損害 | 305,004 | 305,004 | 0 | 
| 後遺症による逸失利益 | 1,019,938 | 4,042,410 | 3,022,472 | 
| 後遺症慰謝料 | 5,520,000 | 6,900,000 | 1,380,000 | 
| 総損害額 | 10,033,533 | 14,566,560 | 4,533,027 | 
| 既払金 | ▲ 2,169,021 | ▲ 2,169,021 | 0 | 
| 弁護士費用以外の損害 | 7,864,512 | 12,397,539 | 4,533,027 | 
| 総損害額 | 7,864,512 | 14,000,000 | 6,135,488 | 
| 合計 | 7,684,512 | 14,000,000 | 6,135,488 | 
 
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- 頚椎捻挫,腰椎捻挫,右足捻挫,右手捻挫及び右足神経炎
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- 1900万円
- 受傷部位
- 外傷性腰椎間板ヘルニア、両股関節挫傷、第5腰椎椎体骨折の傷害
- 後遺障害等級
- 11級7号[脊柱に変形を残すもの]脊柱の障害(第5腰椎の骨折圧迫)
- 獲得金額
- 1065万円
- 受傷部位
- 脳挫傷(右側頭葉)、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折、左肋骨骨折の傷害
- 後遺障害等級
- 12級13号[局部に頑固な神経症状を残すもの]体動時のめまいとの自覚症状について、脳挫傷痕の残存が認められ、他覚的に神経系統の障害が証明される










