獲得金額
1200万円
受傷部位

中心性頚髄損傷

後遺障害等級

9級10号[神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの]頚部受傷後の頚髄損傷に伴う四肢不全麻痺など

事案・ご相談内容

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事故態様44歳・男性・タクシー運転手

受傷部位・内容中心性頚髄損傷

被害者 44歳・男性・タクシー運転手
事故態様 被害者が普通乗用自動車を運転して進行していたところ,一時停止を無視して左側から直進してきた加害者運転の普通乗用自動車が衝突
受傷部位・内容 中心性頚髄損傷の傷害
後遺障害等級 9級10号 [神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの]
頚部受傷後の頚髄損傷に伴う四肢不全麻痺など
獲得金額 1200万円(保険会社最終提示額600万5185円)
裁判所・事件番号
和解年月日
札幌地方裁判所平成29年(ワ)第1968号
平成30年10月2日和解

争点

被害者は,後遺障害等級9級10号の認定を受けた。

ところが,事故後被害者が復職し,減収もなかったところ,加害者側(保険会社)は,加えて診療録の記載等を拾いあげ,後遺障害9級の等級表に応じた35%の労働能力喪失を争い,12級13級を基礎として14%喪失する後遺障害が残存したにとどまると主張し,後遺傷害慰謝料及び逸失利益の額を争った。

その上で,加害者側は,1割の過失相殺を主張するとともに,既往の後縦靱帯骨化症が症状を拡大させた蓋然性が高かったことから,既存障害の影響として,6割の素因減額を主張した。

サポートの流れ

項目 サポート前 サポート後 増額幅
後遺障害等級 9級10号
入通院慰謝料 18,700 1,500,000 1,481,300
休業損害 747,384 747,384 0
逸失利益 4,301,686 10,754,138 6,452,452
後遺障害慰謝料 2,950,000 6,900,000 3,950,000
その他 7,930,937 14,718,889 6,787,952
損害金合計 10,880,937 21,618,889 10,737,952
過失相殺・既払金減額 ▲4,875,752 ▲9,618,889
合計 6,005,185 12,000,000 5,994,815
単位:円

交通事故発生後4か月ほど経った時点で初回相談を受けたが,なお治療中であり,1年8か月後症状が固定した以降に保険会社(東京海上日動火災保険株式会社)から提示を受けた最終提示額が600万円余りにすぎず,裁判所に訴えを提起して解決することとした。

もっとも,タクシー運転手である被害者は,事故後復職し,減収もなく,また,既往症として後縦靱帯骨化症があったことから,和解による解決を目論み,進めることとした。

加害者側の準備で相当時間が経過した時点で,和解のタイミングと考え,後に紹介する書面を提出して,被害者に有利な内容での裁判所の和解勧試を促し,和解による解決を成功させた。

解決内容

裁判所が提案した,原告の主張した各損害額を全て認めた上で,4割の減額だけをした金額に,さらに一定の金額(40万円程度)を加算してもらった額を和解金額とする和解が成立。

所感(担当弁護士より)

原告が事故後,復職し,減収がなかったこと,既往の後縦靱帯骨化症が症状を拡大させた蓋然性が高かったことは事実であったため,原告側としては,和解によって解決することが適切な事案と考え,裁判官の和解へのモチベーションが高くなる時期を狙って,法律的側面・心情的側面からの合理的訴求を試みた結果,成果が得られた。

被害者に有利な内容での裁判所の和解勧試を狙って,起案提出した書面は次のものである。

(参考)
平成29年(ワ)第1968号 交通事故に基づく損害賠償請求事件
原  告  X
被  告  Y
次回期日  平成30年8月22日午後4時00分

第 3 準 備 書 面

平成30年7月31日

札幌地方裁判所民事第3部4係 御中

原告訴訟代理人弁護士  前  田  尚  一 ㊞

原告は,被告の素因減額の主張について,反論をすることに加え,和解による解決にも関わる意見を述べる。なお,略語等は,本書面で新たに用いるもののほか,従前の例による。また,文章の引用部分は,二重山括弧(《》)を用いて示す。

1 後遺障害による症状が本件交通事故に遭って初めて現れた原告としては,乙第7号証の中尾清孝医師作成の意見書(乙7。以下「本件意見書」という。)を基にしてする被告の60%に及ぶ素因減額の主張内容は,到底納得できず,極めて大きな不満,反感を抱かざるを得ない。しかし,原告訴訟代理人としては,本件意見書につき,更に専門的知識に係る鑑定等で攻撃防御を用意するなどして徹底的に争うということになれば,訴訟の長期化が懸念されるところであり,訴えの提起後,被告側に必要な準備のためとはいえ審理過程が既に長期化しつつある段階でもあり,勤務先を退職し早期解決を望む原告の意向を汲み,和解による早期解決も想定している。

2 被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが,共に原因となって損害が発生した場合において,当該疾患の態様,程度などに照らし,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは,裁判所は,損害賠償の額を定めるに当たり,民法722条の規定を類推適用して,被害者の疾患を斟酌することができ(最高裁平成4年6月25日第一小法廷判決・民集46巻4号400頁),その斟酌の可否自体については,加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか,疾患が難病であるかどうか,疾患に罹患するにつき被害者の責めに帰すべき事由があるかどうか,加害行為により被害者が被った衝撃の強弱,損害拡大の素因を有しながら社会生活を営んでいる者の多寡等の事情によって左右されるものではないというべきである(最高裁平成8年10月29日第三小法廷判決・交通事故民事裁判例集29巻5号1272頁)としても,賠償額を減額する割合の具体的算定については,加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか等の事情も考慮して,被害者の疾患を斟酌する程度が判断されるのが,素因減額を認めるための基本理念である公平に適うものというべきである。

3 ところで,損害額の算定にあたっては,生活費控除率(生活費控除割合)について,公平の観点から,被害者の属性によって,残された家族の生活保障,平均賃金の男女差格差等を考慮して,割合的な類型的処理がされるなど適正な損害額となるように損害額算出の過程で調整もされている。
また,個別場面についても,中間利息を3%として逸失利益を算定した札幌高裁判決につき,中間利息の控除割合は民事法定利率によらなければならないとして,破棄差戻しとした事例があるが(最高裁平成17年6月14日第3小法廷判決・民集59巻5号983頁),中間利息の控除割合を改めるだけであれば自判すれば足りるのに差戻しとしたのは,原審が中間利息の控除割合を年3%としたために,慰謝料額を低くした可能性等を考慮したためと考えられる(大島眞一「交通損害賠償訴訟における虚構性と精緻性」判タ1197号30頁)。
交通損害賠償事件における損害額,特に将来の損害については,多くの虚構といってもよいものに大きく左右されざるを得ず,適正な損害額となるように損害額算出の過程で調整する必要があるところ,素因減額は,技巧的に民法722条2項を用いて過失相殺と同様の算定プロセスで計算されるとしても(なお,横浜地裁平成13年1月23日判決・判タ1118号215頁),そもそも被害者自身の意思に基づいてして行動についての非難可能性を採り上げられる過失相殺とは,似て非なるものである。既往症があったとしても症状として現れておらず,後遺障害による症状として,当該交通事故に遭って初めてが現れたような場合,そのことを全面的に採り上げることは,明らかに法感情に反し,公平を損なうものであるといわなければならない。
加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか等の事情も,公平の観点からは,それを考慮して慰謝料額を算定するなど,適正な損害額となるように損害額算出の過程で調整する必要があるというべきである。

4 被告は,新札幌整形外科病院における中心性頚髄損傷との診断を,本件意見書を基に論難しているが,本件意見書は,原告に対する直接的な診断,診察は行っておらず,専ら,自身の見解を専門的知見として示しながら,推測をもって意見を述べているものにすぎず(乙12,13も,被告が採り上げた傷病と病態についての一般論を解説するものであって,中尾清孝医師の示す専門的知見を直接に裏付けるものではない。),《外傷性脊髄損傷と評価するのは相当でなく,既往の後縦靱帯骨化症・発育性脊柱管狭窄症による頸椎症性脊髄症が,事故によって発症・憎悪したものと判断するのが相当である》と断定することには疑問がある(同様の状況で作成されたと推察される中尾清孝医師作成の意見書における意見が採用できないとされた事例がある(名古屋地裁平成20年8月22日判決・交通事故民事裁判例集41巻4号990頁)。)。

そして,仮に既往の後縦靱帯骨化症が症状を拡大させたものであるしても,本件意見書において,《素因であるOPLLも関与しその寄与度は50-60%程度と考えられる》と述べているものの,その理由としては,《OPLLは無症候性であったが骨化占有率は脊柱管前後径の約30%程度であり比較的大きかったこと,以上3点を考慮する》と記載しているだけである。前2者は,後縦靱帯骨化症が症状を拡大させた場合に限る事情ではないし,最後のものは,骨化占有率の程度が,そもそも後縦靱帯骨化症の寄与度に影響するものであるのかどうか,影響するとしてその程度に応じ寄与度は具体的にどのように増加するのかといった点については,医学的裏付けが全く提示されていない。
以上のとおり,本件意見書の内容は,《原告の治療及び後遺障害については,被告の60%の素因減額を要するというべきである。》との被告の主張を裏付けるものではなく,被告の同主張は,余りに放埒な主張であるというほかない。

逸失利益の賠償について,不正確さを伴わざるを得ない場面では,裁判所は,あらゆる証拠資料に基づき経験則と良識を十分に活用して,できる限り蓋然性のある額を算出するように努め,それでも,蓋然性に疑いがあれば,控え目な算定方法を採るべきであるところ(最高裁昭和39年6月24日第三小法廷判決・民集18巻5号874頁参照),本件においては,損害賠償の額を定めるに当たり,素因減額を認めることができる許容範囲は,せいぜいその割合は20%程度であるといわなければならない。

5 以上述べたところは,基本的には,判決による解決を想定してのものであるが,原告の心情にご配慮の上,これらを和解勧試の内容に考慮いただけるのであれば,原告訴訟代理人としても,原告に対し,和解による解決を積極的に勧める考えである。
以上

前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

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