獲得金額
4215万4017円
受傷部位
後遺障害等級

死亡事故

事案・ご相談内容

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被害者 無職女性(専業主婦):事故時76歳
事案 死亡事故
獲得金額 4215万4017円(保険会社最終提示額2118万7268円)
裁判所・事件番号
裁判年月日
札幌地方裁判所平成27年(ワ)第2499号
平成29年4月6日判決

争点

被害者は、後遺障害等級9級10号の認定を受けた。

ところが、事故後被害者が復職し、減収もなかったところ、加害者側(保険会社)は、加えて診療録の記載等を拾いあげ、後遺障害9級の等級表に応じた35%の労働能力喪失を争い、12級13級を基礎として14%喪失する後遺障害が残存したにとどまると主張し、後遺傷害慰謝料及び逸失利益の額を争った。

その上で、加害者側は、1割の過失相殺を主張するとともに、既往の後縦靱帯骨化症が症状を拡大させた蓋然性が高かったことから、既存障害の影響として、6割の素因減額を主張した。

サポートの流れ

項目 サポート前

(保険会社最終提示額)

サポート後

(判決結果)

増額幅
傷害に関する損害 365,420 365,420 0
逸失利益 20,000,000 10,799,959 10,799,959
慰謝料 20,000,000
近親者慰謝料 0 2,500,000 2,500,000
葬儀費用 1,135,479 1,135,479 0
弁護士費用 0 3,480,000 3,480,000
損害額合計 21,500,899 38,280,858 16,779,959
既払金 313,631 313,631 313,631
認容額合計(主文) 21,187,268 37,967,223 16,779,955
遅延損害金 0 4,186,794 4,186,794
合計 21,187,268 42,154,017 20,966,749
単位:円

事案の内容

被害者が、本件市道を横断中、転倒し、立ち上がろうとしている際、本件市道を走行してきた加害者運転の除雪車(加害車両)に轢過され、死亡し被害者がに轢過されて死亡した次の事故態様の事案で、相続人らが、保険会社の対応に納得できず、当事務所で対応することとなり、訴えを提起し、訴訟事件とし、裁判所の判決をもらって解決した事件です。

争われた内容(争点)

本件訴訟では、次の諸点が争われました。

1 争点(1)

(1)被害者(死亡)及び相続人に生じた損害及び金額

ア 死亡による逸失利益
(ア)基礎収入
(イ)生活費控除

イ 被害者本人の死亡慰謝料
ウ 相続人ら固有の損害(近親者慰藉料)
エ 弁護士費用

(2)本件事故による損害の算定に当たって斟酌すべき過失が、死亡した被害者にあったといえるか。

解決内容

1 損害及び金額について
〇死亡による逸失利益について、加害者側は、日常家事労務の金銭評価は、70歳以上の賃金センサス女性学歴計年齢別70歳以上の金額の6割に当たる年額170万1120円を基礎とすべきと主張したが、裁判所はその7割である年額198万4640円とするのが相当であると判断しました。また、家事労働部分の生活費控除率について、加害者側は、4割とすべきと主張しましたが、裁判所は、3割としました。〇死亡慰謝料については、加害者側は、相続人ら固有の慰謝料も含めて200万円とすべきと主張したが、被害者自身の慰謝料2000万円に加え、相続人ら固有の慰謝料を合計250万円を別途認めた。〇弁護士費用について、加害者側は、自賠責保険会社に被害者請求をした場合に受領できる約2300万円程度の額を控除した金額を基礎として算定すべきと主張したが、裁判所は、これを全面的に斥けた。2 過失相殺について〇加害者側は、①死亡した被害者が、付近に歩道があったのに、本件市道を横断したこと、②本件市道を横断するに当たって、加害車両の動静を十分に中止しないまま本件市道の横断を開始し、自ら転倒した上、中腰になるまでに10秒近くを要した後に、本件事故が発生したこと、③本件事故発生当時、積雪のため、加害者から見て左方の見通しは極めて悪かったこと、④加害車両にはバスケットが装着されており、これにより通常の車両より前方の見通しが悪かったことを踏まえると、被害者が高齢者であることを考慮しても、被害者には、本件事故による損害の算定に当たって斟酌すべき過失があったということができ、その割合は2割程度とするのが相当である、と主張しました。これに対し、被害者側は、次のとおり主張したところ、裁判所は、本件事故による損害の算定に当たって斟酌すべき過失があったということができないと判断しました。①加害車両が発進した地点と被害者が轢過された地点までの距離は、わずかに15.8メートルであり、被害者が本件市道上で転倒してから加害車両に轢過されるまでの時間は、12秒間であったが、加害者がその間、被害者の存在に全く気付いていたなったということからすれば、加害者には重過失が認められてしかるべきである。②また、本件事故当時の本件市道の路面状況からすれば、転倒したり、その後、立ち上がるのに時間を要したりすること自体、社会生活上、非難すべきものとは認められない。③加えて、被害者が高齢者であったことを考慮すると、本件事故による損害の算定に当たって斟酌すべき過失が、被害者にあったということはできない。

所感(担当弁護士より)

死亡事案、後遺障害事案は、保険会社の提示する示談額はかなり低く、裁判所に訴えを提起して解決するとかなり増額されることが多いですが、本件の保険会社の提示額はひどく低いものでした。

訴え提起後は、実質的に保険会社が対応することになりますが、それまで主張していなかった過失相殺を主張してきたり、弁護士費用についてかつて流行ったけれど裁判所で認められない場合が多く、本件訴訟当時もはや主張を見たこともない反論がされてきました。

ご参考まで、当事務所の提出した準備書面をご紹介いたします。

(その1;平成28年9月20日付け準備書面)

頭書事件について、平成28年8月10日付被告準備書面(2)に対する原告の認否・反論は以下のとおりである。なお、略語等は従前の例による。

第1 ≪第2 過失相殺の主張 1、本件事故状況≫について
(1)ないし(5)については、甲号証、乙号証に現れている限りで認める。

第2 ≪第2 過失相殺の主張 2、過失割合の評価≫について
1(1)被告は、亡○○が被告車両の動静を十分注視すべきであったにもかかわらず、十分注視しないまま横断を開始したと主張するが、そのような証拠はない。むしろ、路状に雪が積もっていたこと、亡○○が事故当時76歳という高齢であったことからすれば、亡○○が十分に周囲に注意して歩行していたと考える方が自然である。

(2)被告は、亡○○が転倒した後、10秒近く経ってようやく中腰になったことについて、被害者が転倒せずあるいは早期に立ち上がっていれば本件事故は発生していない可能性が強く、この亡○○の行為を過失割合の評価の対象とすべきであると主張する。
しかし、雪道において転倒することは通常のことであるし、まして事故当時76歳であった亡○○が、転倒から立ち上がるのに時間がかかったとしても当然のことである。それにも関わらず、この亡○○の行為を過失として評価するとすれば、高齢者であること自体を過失として評価するに等しく、不適切である。またそのような評価は、別冊判例タイムズNo38「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」110頁において、歩行者と四輪車との横断歩道等の近くではない事故の場合に、歩行者が高齢者であることが歩行者の過失割合を減じる要素となっていることと矛盾することを付言する。

2(1)本件事故は被告車両が進行していた市道○○○○線路上で発生したところ、本件事故時は、被告車両の前方の見通しはよく(乙第3号証、写真1)、また、乙第4号証によれば被告車両が発進した地点と亡○○が礫過された地点までの距離は15.8メートルしかなかった。また、乙第5号証によると、亡○○が道路上で転倒したのは補正時刻で午前8時36分34秒であり、被告車両と亡○○が衝突したのは、補正時刻で午前8時36分46秒である。そうすると、少なくともその間に一度でも被告が前方を注視するという基本的な義務を尽くしておれば、被告が亡○○に気付くことができ、本件事故が発生しなかった可能性が高い。したがって、被告は少なくとも12秒以上の間前方を注視しなかったのであり、重過失が認められる。

(2)また被告は本件事故当時、左方の見通しが困難であったことを主張する。しかし、乙第4号証のA3サイズの交通事故現場見取図に示されているように、本件事故は被告車両が進行していた市道稲穂3条7丁目1号線路上で発生しており、仮に被告主張のとおり左方の見通しが困難であったとしても、被告の車両から見ての左方の見通し云々は被告の過失を減じるものではない。

3 以上から、亡○○:被告の過失割合は0:100とされるべきである。

(その2;平成28年9月20日付け準備書面)

被告の平成28年12月26日付け準備書面(4)(以下「被告準備書面」という。)に対する原告の反論は、次のとおりである。なお、略語等は、本書面で新たに用いるもののほか、従前の例による。また、文章の引用部分は、二重山括弧(《》)を用いて示す。

第1 被告準備書面の第1の2に対する原告の反論
標記部分のうち被告の主張にわたる部分につき、反論する。

1 慰謝料について
被告の主張は、つまるところ、高齢者の生命の尊厳を軽視するものであって、不当であるというほかない(現在の高齢化社会で、76歳で死亡した亡○○を、《人生をほぼ全うしたと考えられる》などと評すること自体が、原告らとしては全く納得できないことである。)。
実際、《かつては、50歳以上の者については減額することがあるとされていたが、現在は、一般的に高齢者という点を特段に突出した事情としては捉えてはいないようである。》((北河隆之『交通事故損害賠償法[第2版]』[2016年、弘文堂]244頁))。

2 弁護士費用について
被告の主張は、被害者が自己の権利擁護のために訴えを提起することを余儀なくされるのは、加害者側の保険会社が示談額として裁判所基準を大きく下回る金額しか提示しないことが専らの原因であることを殊更埒外に置こうとするものであって、的を射ないものである。
同様の主張は、10年ほど前わずかながら見られたが、現在は遭遇することもなく、おそらくは既に独自の主張として風化していると思われる。

第2 被告準備書面の第2に対する原告の反論
1 過失相殺について
被告は、《本件においても原告側に一定の過失割合を認めるのが相当である》と主張するが、被告の主張は、次のとおり採用することができない。

(1)本件事故が発生した市道○○○○線は、《歩車道の区別無い》(乙3)道路で、歩行者の通行が当然に予想される道路であるところ、《直線道路で前後左右共に良好であ》る上(乙1、3)、事故当時(事故後排雪作業が実施される前)の《車道幅員4.1メートル》(乙3、4)で、容易に目が届く範囲であって、被告は、走行中ではなく、大型特殊自動車(ショベル・ローダ)を運転して排雪作業中であり、《路面状況は、圧雪アイスバーン路面上に雪が堆積し、表面は凹凸状態で》(乙3)あったのだから、周囲の積雪状況を踏まえながら、殊更付近の進路の歩行者の安全を確認しつつ進行すべきである(なお、《積雪のため被告から見て左方の見通しは極めて困難であった》(被告の平成28年8月10日付け準備書面(2)の第2の1(4)、2(2))などという事情があったとしても、およそ被告に有利に考慮するに値しないものである(もっとも、被告が摘示する証拠からもそのような事情は認め難い。)。
ところが、被告車両が発進した地点と亡○○が礫過された地点までの距離は15.8メートルしかないばかりか(乙4([②~③]+[③~④]-[④~㋐]))、亡○○が道路上で転倒したのは午前8時36分34秒であり、被告車両と亡○○が衝突したのは、補正時刻で午前8時36分46秒であり(乙5。いずれも補正時刻による。)、被告は、わずか12秒間さえも前方を注視せずに、亡○○の存在にさえ全く気が付いていないというのであるから、被告には、著しい過失どころか重過失が認められてしかるべきである。

(2)また、車両側の過失は、第三者の身体・財産に向けられた注意義務の懈怠として問題とされるのに対し、歩行者の過失とされるものは自分の身体・財産を守る上での不注意・落ち度であって、両者は質的に差異があり、単純な対比は不可能であるところ(歩行者との間で、「過失割合」という概念で事を論じようとする被告の立論も理解できないところである。過失相殺に関する相対説の立場であっても、対歩行者事故においては過失割合という思考をとらない。)、上記の路面状況において転倒し、転倒から立ち上がるのに時間がかかったとしても、社会生活上、非難すべきものと認めることはできず、上記の本件の事故態様において、《転倒して横臥しないようすべきであり、かつまた横臥したら早期に立ち上がって車両運転手の発見を容易にすべき義務が存する》などと論じるのは筋違いというほかない(事故当時76歳であった亡○○が、上記の路面状況で、転倒し、転倒から立ち上がるのに時間がかかったとしても、かえって歩行者が高齢者であることは、歩行者の過失割合を減じる要素となるべき事情でさえある。)。

(3)以上のとおりであるから、亡○○について、過失相殺率は0であるというほかない。

2 逸失利益について
(1)基礎収入について
被告の主張は、賃金センサスを70歳以上のそれに限定した上、さらに4割を減じるという制限を加えるものであるが、二重の制限を加える根拠が全く明らかでないことに加え、家事労働を全く考慮しないものであって、当を得ないものであることは明らかである。

(2)生活費控除率について
交通損害賠償事件における損害額の判断については、多くの虚構といってよいものに大きく左右されているが、生活費控除率については、実務上、損害額を調整するために使われており、一家の支柱と男性・女性による区別がされているところ、女性の生活費控除率が低くされているのは専ら女性の平均賃金が男性と比較して低いために公平の観点から格差を是正したものである。そして、生活費控除率あ機能があるため、女子年少者の逸失利益につき、全労働者(男女計)の平均賃金を用いる場合には、その生活費控除率を高めに設定されている。
被告の主張は、生活費控除率の機能を無視し、老齢者の生活を自己本位に形式的に把握して軽視するものであって、不当であるといわなければならない。

前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

その他の解決事例

獲得金額
1065万円
受傷部位
脳挫傷(右側頭葉)、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折、左肋骨骨折の傷害
後遺障害等級

12級13号[局部に頑固な神経症状を残すもの]体動時のめまいとの自覚症状について、脳挫傷痕の残存が認められ、他覚的に神経系統の障害が証明される

獲得金額
2314万円8910円
受傷部位

頚髄損傷、左腓骨骨折、頚椎骨折(四肢機能全廃)

後遺障害等級

1級3号[神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの]頚髄損傷、左腓骨骨折、頚椎骨折(四肢機能全廃)

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