平成26年12月3日民事第3部判決

札幌地方裁判所判決
平成25年(ワ)第2555号
損害賠償請求事件
平成26年12月3日民事第3部判決

主 文

1 被告らは、原告に対し、連帯して438万6363円及びこれに対する平成24年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを3分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。
4 この判決は、第1項及び前項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求
被告らは、原告に対し、連帯して、671万8007円及びこれに対する平成24年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
本件は、被告有限会社A(以下「被告会社」という。)の被用者である被告Y以下「被告Y」)という。)が運転する普通貨物自動車が原告に衝突し、原告が傷害を負い、その後に後遺障害が残った交通事故について、原告が、被告会社に対しては自動車損害賠償保障法3条又は民法715条に基づき、被告Yに対しては自動車損害賠償保障法3条又は民法709条に基づき、それぞれ、損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める事案である。

1 争いのない事実
(1)次の交通事故(以下「本件事故」)という。)が発生した。
ア 日時 平成24年3月21日午前11時30分頃
イ 場所 札幌市白石区中央3条2丁目1番
ウ 加害車両等 被告Yが運転する普通貨物自動車(以下「本件車両」という。)
エ 被害者 原告(昭和28年1月6日生)
オ 態様 被告Yが、青信号に従って本件車両を進行させて上記場所先の交差点を右折していた際に、同じく青色信号に従って横断歩道によりその進路の前方を横断していた原告に対し、本件車両を衝突させた。
(2)本件事故の際、被告会社は、自己のために本件車両を運行の用に供しており、また、被告Yは、被告会社の被用者であり、被告会社の事業の執行として本件車両を運転していた。
(3)原告は、本件事故により、両膝打撲傷、両肘打撲傷、肋骨打撲傷、骨盤打撲傷、右肩関節捻挫の傷害を負い、平成24年3月21日から同年9月4日まで通院して治療を受けたが、同日、右肩~上肢痛の後遺障害を残して症状固定した。上記後遺障害は、自動車損害賠償保障法施行令別表第2所定の後遺障害等級(以下「後遺障害等級」という。)14級9号に該当するものであった。
(4)原告は、本件事故による損害の一部塡補として、68万3702円の支払いを受け、これが損害金の元本に充当された。
(5)原告は、平成23年6月29日から、その長女であるB(以下「B」という。)と同居していた。
2 争点
(1)被告Yの運行供用者性
(原告の主張)
本件事故の際、被告Yは、自己のために本件車両を運行の用に供していたから、自動車損害賠償保障法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」に当たる。
(被告Yの主張)
否認し、争う。
(2)被告Yの過失
(原告の主張)
本件事故の際、被告Yには、交差点を右折する際に横断歩道上の歩行者の有無を確認しつつ右折進行すべき義務があるのにこれを怠った過失がある。
(被告らの主張)
否認し、争う。
(3)原告の損害
(原告の主張)
本件による原告の損害は、次のとおりである。
ア 治療費 54万8767円
イ 通院交通費 5万7760円
ウ 休業損害 163万8115円
原告は、本件事故当時、Bと同居し、主婦として家事労働に従事していたところ、本件事故による傷害の治療のために通院していた168日間、休業せざるを得なかった。その休業損害は、平成23年の女子労働者の全年齢平均賃金額である355万9000円を基礎として算定すると、163万8115円である(355万9000円×168日÷365日=163万8115円)。
エ 逸失利益 184万7067円
原告の後遺障害による労働能力喪失の割合は5%である。原告は、本件事故がなければ、症状固定後も、平均余命の2分の1である15年間は主婦として家事労働をすることができたから、その逸失利益は、平成23年の女子労働者の全年齢平均賃金額である355万9000円を基礎として算定すると、184万7067円である(355万9000円×5%×10.3797=184万7067円)。
オ 傷害慰謝料 120万円
原告は、本件事故による傷害の治療のために168日間通院し、多大な精神的苦痛を被ったから、傷害による慰謝料は120万円を下らない。
カ 後遺障害慰謝料 150万円
原告の後遺障害が後遺障害等級14級に該当するものであり、日常生活上様々な支障が生じていることや、被告Yの注意義務違反の程度が重大であったことから、後遺障害による慰謝料は150万円を下らない。
キ 弁護士費用 61万円
(被告らの主張)
ア 治療費について
認める。
イ 通院交通費について
認める。
ウ 休業損害について
否認する。
原告は他人のために家事労働に従事する主婦ではなく、家事は原告とBとが分担していた。したがって、店舗の従業員等としての収入額を基礎とするか、そうでなくとも、これと女子労働者の全年齢平均賃金額とを合算した額の2分の1程度の額を基礎として休業損害を算定すべきである。また、原告は、遅くとも平成24年4月末頃には家事労働を再開し、同年6月26日以降は更に症状が改善していたから、仮に家事労働について休業損害を算定するとしても、同年5月1日からは50%、同年6月26日からは30%の各割合により算定すべきである。
エ 逸失利益について
否認する。
労働能力喪失期間は、2年が相当である。また、原告は、平成25年7月からBと別居し、今後も同居しないから、店舗の従業員等としての収入額を基礎とするなどして逸失利益を算定すべきである。
オ 傷害慰謝料について
争う。
原告の症状、治療経過に鑑みると、傷害による慰謝料は30万円が相当である。
カ 後遺障害慰謝料について
争う。
原告の後遺障害には、本件事故と相当因果関係のない疾患が影響しているから、後遺障害による慰謝料は60万円が相当である。
キ 弁護士費用について
争う。

第3 争点に対する判断
1 争点(2)(被告Yの過失)について
前記第2の1の事実関係によれば、被告Yには、本件事故の際、本件車両を運転し、交差点を右折して横断歩道を通過するに当たり、当該横断歩道によりその進路の前方を横断する歩行者の確認を怠った過失があるというべきである。
2 争点(3)(原告の損害)について
(1)治療費について
本件事故による損害として、54万8767円の治療費が生じたことは、当事者間に争いがない。
(2)通院交通費について
本件事故による損害として、5万7760円の通院交通費が生じたことは、当事者間に争いがない。
(3)休業損害について
前記第2の1の事実関係に加え、証拠(甲7、15、17~27、乙2の1・2、6~9、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、①原告は、平成23年6月29日から、その長女であるBと同居していたこと、②本件事故当時、原告及びBはそれぞれ店舗の従業員等として働いていたが、家事はほぼ原告がしていたこと、③原告は、本件事故による傷害のため、家事労働に従事することができなくなったが、平成24年5月上旬には少しずつ家事労働に従事することができる状態になり、同年8月には相当程度の家事労働に従事することができる状態になっていたことが認められ、これを左右するまでの証拠はない。これに加え、証拠(甲7、乙2の1・2、原告本人)によれば、原告は、同年3月21日から同年4月30日までは労働能力の全てを、同年5月1日から同年7月31日までは平均してその65%を、同年8月1日から同年9月4日までは平均して35%を、それぞれ喪失していたものと認めるのが相当である。そして、上記事実関係によれば、原告は、本件事故がなければ、上記各期間中、家事労働により、1年当たり、賃金センサス平成24年第1巻第1表中の産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者の全年齢平均賃金額である354万7200円を下らない財産上の利益を上げることができたというべきであるから、109万5658円の休業損害を認めるのが相当である(354万7200円×41日÷366日+354万7200円×65%×92日÷366日+354万7200円×35%×35日÷366日=109万5658円(円未満切捨て。以下同じ。))。
(4)逸失利益について
上記第2の1のとおり、原告の後遺障害は後遺障害等級14級9号に該当するものであり、これに加え、証拠(甲7、15、乙2の1・2、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は上記後遺障害により労働能力の5%を喪失し、その期間は5年を下らないものと認めるのが相当である。そして、上記(3)の事実関係によれば、原告は、本件事故がなければ、上記期間中、家事労働により、1年当たり、賃金センサス平成24年第1巻第1表中の産業計・企業規模計・学歴計・女子労働者の全年齢平均賃金額である354万7200円を下らない財産上の利益を上げることができたというべきである。原告とBとの別居が予定されていたなどの事情を認めるに足りる証拠はない。したがって、ライプニッツ方式により年5年分の割合による中間利息を控除し、76万7880円の逸失利益を認めるのが相当である(354万7200円×5%×4.3295=76万7880円)。
(5)慰謝料について
本件事故による原告の傷害の程度、治療経過、後遺障害の程度等の本件に現れた一切の事情を総合勘案すると、傷害による慰謝料、後遺障害による慰謝料として、それぞれ110万円の支払を命ずるのが相当である。原告の後遺障害に本件事故と相当因果関係のない疾患が影響を与えていると認めるに足りる証拠はない。
(6)弁護士費用について
上記(1)ないし(5)の損害の合計額467万0065円から前記第2の1の損害の塡補の額を控除すると損害金の残元本は398万6363円となるところ、本件事案の内容等に照らすと、弁護士費用について、本件事故と相当因果関係のあるものとしては、40万円の損害を認めるのが相当である。
3 結論
よって、その余の点について検討するまでもなく、原告の請求は、被告会社に対しては民法715条に基づき、被告Yに対しては同法709条に基づき、それぞれ438万6363円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからその範囲で認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

裁判官 安江一平


前田 尚一(まえだ しょういち)
前田尚一法律事務所 代表弁護士
出身地:北海道岩見沢市。
出身大学:北海道大学法学部。
主な取扱い分野は、交通事故、離婚、相続問題、債務整理・過払いといった個人の法律相談に加え、「労務・労働事件、クレーム対応、債権回収、契約書関連、その他企業法務全般」も取り扱っています。
事務所全体で30社以上の企業との顧問契約があり、企業向け顧問弁護士サービスを提供。

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